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サンチャ・カリリョは「アルフォンソ11世の姪」なのか

レオノール・ロペス・デ・コルドバは、回想録「Memorias」の中で、母サンチャ・カリリョをこう紹介している。
"Sobrina e Criada del Senor Rey Don Alfonso, padre del dicho Senor Rey Don Pedro."
ドン・ペドロの父であるアルフォンソ11世の姪で、侍女としても仕えていた、と。

レオノールの父マルティン・ロペス・デ・コルドバの墓碑に彫られた紋章には、四分割された上半分にロペス・デ・コルドバ家、下半分にカリリョ家の紋章が彫られている。
第1クォーター(左上)はサァベドラ、第2クォーター(右上)はマヌエル、第3クォーター(左下)はフェルナンデス・デ・コルドバ、第4クォーター(右下)はカリリョ姓のもの。
piedra.jpg

レオノールは自身の家系に大変な誇りを持っていた。
フェルナンド・デ・アンテケラ(後のアラゴン王フェルナンド1世)に対しても、父マルティン・ロペス・デ・コルドバが最期まで正統な王に対して忠実であったこととともに、両親の血統の正しさを主張している。

サンチャ・カリリョの父方のルーツをたどってみると、こうなる。
カリリョ家.gif

父:フアン・フェルナンデス・カリリョ   (母:サンチャ・デ・ロハス)
祖父:ペドロ・ルイス・カリリョ      祖母:ウラカ・ラソ・デ・ラ・ベガ
曽祖父:フェルナンド・ディアス・カリリョ 曾祖母:マリア・ガルセス
高祖父:ディエゴ・アロンソ・カリリョ   高祖母:メンシア・フェルナンデス・デ・コルドバ

第3クォーターのフェルナンデス・デ・コルドバ家の紋章はサンチャの高祖母メンシアに由来するものらしい。メンシアは、コルドバの執行長官アルフォンソ・フェルナンデス・デ・コルドバと兄妹(姉弟)であり、高名なフェルナンデス・デ・コルドバ家に属する。
第4クォーターの紋章はもちろんカリリョ家のもの。サンチャの祖父ペドロ・ルイス・カリリョは、アルフォンソ11世のもとで輝かしい軍歴を重ねて多くの褒賞を与えられ、アルフォンソ11世の死後はドン・ペドロにも仕えた。このことから、サンチャがアルフォンソ11世の宮廷で侍女として仕えていたとしても不思議はないと思う。

次に、サンチャが「アルフォンソ11世の姪」である件。
アルフォンソ11世と兄弟姉妹にあたるのはいったい誰なのか。アルフォンソ11世の父フェルナンド4世は庶子を持っておらず、子はアルフォンソ11世とアラゴン王妃となるレオノールのみ。もちろん、彼女とサンチャに血縁関係はない。
ドン・ペドロが黒太子を「いとこ殿」と呼ぶように、実際の関係とは別に、親しさをあらわすために「姪、甥、おじ、おば」などと呼ぶことがある。ただ、血統を証明する場合、心情的な部分は排除されるべきでは…と思わなくもないけれど、まるっきりのでたらめでもなかったりする。
サンチャの高祖父ディエゴ・アロンソ・カリリョの甥にガルシ・ゴメス・カリリョがいる(サンチャの曽祖父フェルナンド・ディアス・カリリョの従兄弟)。ガルシ・ゴメス・カリリョの妻は、アルフォンソ10世の従姉妹(おそらくフェルナンド3世の兄弟の庶子)。このガルシ・ゴメス・カリリョ夫妻の子孫については「アルフォンソ11世の甥(姪)」と呼ぶことができたのだとか。ただし、ガルシ・ゴメス・カリリョの従兄弟であるフェルナンド・ディアス・カリリョの子孫を「アルフォンソ11世の甥(姪)」と呼ぶことはない。つまり、サンチャは「アルフォンソ11世の姪」とは呼ばれない。
王家とカリリョ家.gif

父の墓碑に、名門フェルナンデス・デ・コルドバ家とカリリョ家の紋章を配したこと、系図の中の微妙な関係を操作したこと、これらはレオノールが故意に行ったことなのか、周囲から伝え聞いた情報が間違っていたのか、単なる思い込みや勘違いなのかはわからない。
個人的には、レオノールは確信犯だったのではないかと思っている。自分の主張になんの後ろめたさも疑問も持たなかったに違いない。レオノールはとにかく信念の人なのだ。若干ずれていたとはしても。
カタリナ・デ・ランカスターは、その血によって、ドン・ペドロの威厳を取り戻した。悲惨な人生を歩んできたレオノールにとっては大変な衝撃だったと思う。レオノールが金や権力、血統に絶対的な支えを見出すきっかけにもなったかもしれない。

*参考(スペインの紋章サイト)
カリリョ姓
http://heraldicahispana.com/ApA/carlos-carrion.htm#Carrillo
コルドバ姓
http://heraldicahispana.com/ApA/corcuera-cos.htm#Cordoba
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tag : レオノール・ロペス マルティン・ロペス

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非公開コメント

うがーー なんか混乱してきましたー!
「スペイン人の名前覚えらんない」ってランカスター公状態です(笑)
ロペスの墓石に彫られている勲章ですが、これはロペス個人の紋章ですよね?
(たしか紋章って一人一人に固有のものでしたよね…違いましたっけ?)
ロペスの紋章にその妻の実家、つまりカリリョ家の紋様が組み込まれるのは分かるんですが、妻の父方の高祖母の実家…フェルナンデス・デ・コルドバ家が入るのはちょっと唐突な気がします。
これは実際にロペスが使っていた紋章なのか、それともレオノールが勝手に考えて作ったのか。
…なんとなく後者のような気がするな…。
紋章院みたいな機関はまだないでしょうしね(イングランドでさえ15世紀創設)。
ああ分からないことだらけだ。
紋章学もそろそろちゃんと勉強しないと…

あぁ、私もランカスター公状態です。記憶力もよい方ではないし(笑)
また出てくる名前が王城で馴染み深い方々の名前とかぶるので「あ、ウラカ」「お、フェルナンド」「あぁ~ディエゴ!」ってよけいにこんがらがってホイ!です(汗)
>カタリナ・デ・ランカスターは、その血によって、ドン・ペドロの威厳を鮮やかに取り戻した。
>悲惨な人生を歩んできたレオノールにとっては大変な衝撃だったと思う。レオノールが金や権力、血統に絶対的な支えを見出すきっかけにもなったかもしれない。
この二人の絡み、ものすごく興味津々です。
これはくみぞうさまにレオノールの謎をさらに詳しく追求していただき、橋渡しをしてもらわねば。
もっともっと教えてください!よろしくお願いします!

Mlle Cさま
相関図を追加してみました。
これで少しはわかりやすくなったでしょうか。って、自分でも作ってるうちにランカスター公状態になりました(笑
>これは実際にロペスが使っていた紋章なのか、それともレオノールが勝手に考えて作ったのか
私も後者だと思いますよ(笑
ロペス記("CRONICA DE UNA LEALTAD EN TIEMPOS OSCUROS")にも、ロペスの墓碑の紋章はレオノールがなんらかの意図を持って彫らせたもののように書かれています。
おそらくこの紋章はロペスが用いていたものとは違うんじゃないですかねー。レオノールが系図の中からいいとこ取りで作った、というか。これはロペス側の紋章を辿ってみても同様の結果になります。
カタリナ・デ・ランカスターは彼女の主張を容認していたようですが、紋章学上は胡散臭い気がしますね~。

Makoさま
相関図を追加してみましたがいかがでしょうか?
ウラカといえば、マリアの従姉妹でドン・ペドロの庶子サンチョ(史実ではフェルナンド)を産んだウラカ(史実ではマリア・デ・イネストロサ)は、レオノールとも無関係ではありません。
ウラカの夫ガルシ・ラソ・カリリョはレオノールの祖父フアン・フェルナンデス・カリリョの弟なんですよー。
レオノールの夫は、王妃マリア・デ・パディリャの伯父であるイネストロサの息子。ドン・ペドロが健在であれば、レオノールの人生はまったく違ったものになっていたでしょうね。
レオノールとカタリナ・デ・ランカスターの関係は、後のフアン2世とアルバロ・デ・ルナとの関係に例えられるほど親密な関係でしたが、詳しい資料はあまり残されていないようです。
わかる範囲で書いていきますので気長にお待ちくださいね~。

こんばんは
相関図ありがとうございます。図で見るとすっきりしますね。
Estow女史の記述で↓
http://books.google.co.jp/books?id=LfFpcvvJQlcC&pg=PA97&dq=estow+martin+lopez+de+cordoba&lr=&as_brr=3&sig=QjiBifxnFJYMBPP-w4akRBULYX0
マルティン・ロペスがマヌエル家の出ではなく、アロンソ・フェルナンデス・
デ・コルドバの三男の家系に続く・・・ということだったので、
第三クォーターのコルドバ紋はマルティン・ロペス関係だと思っていました。
紋章学は難しいし、レオノールが偽っていたとしたら哀しいですね。
英訳のレオノール記もなんとか読み終えたのですが、スペイン語でないからなのか
文面の印象が硬い、冷たい感じでした。
彼女の性格がそうさせたのではないと願っています。

>英訳のレオノール記
回想録のことで~す。
興奮してコメントさせていただいたので、誤解を招く書き方でした。
ごめんなさい m(__)m

>相関図を追加してみましたがいかがでしょうか?
ありがとうございます!「私がわかりやすくご説明しますわ」とコンスタンシアのように解説してくださるくみぞうさまのお心遣いに感謝でございます!
>ドン・ペドロが健在であれば、レオノールの人生はまったく違ったものになっていたでしょうね。
本当にねえ…(しみじみ)3人の王女達もどうなっていたでしょうね。でもコンスタンシアはランカスター公とは運命的な夫婦だったと思うので、王様が健在でも結びついたような気がしたりして。
>わかる範囲で書いていきますので気長にお待ちくださいね~。
レオノールの記、楽しみにしております!

みゆきさま
ロペス家の紋章はまた後ほど記事にしたいと思いますが、結局のところ、はっきりした答えは出ていないようなんですよ。残念ですけれど…。
レオノールの言葉から真実を探るしかないのでしょうが矛盾もありますし、どの程度まで知っていたのか、知らなかったのか…。うーん。
>スペイン語でないからなのか文面の印象が硬い、冷たい感じでした
レオノールの性格のせいではないと思いますよ~
私にとっては英語っていつも冷たいです(笑
レオノールの回想録も抜粋ではなく、いつか通しで読んでみたいです。とりあえず手元の本を整理してからになりますか←いつになるやら

Makoさま
>コンスタンシアはランカスター公とは運命的な夫婦だったと思うので、王様が健在でも結びついたような
私もそう思います!
あの状態でドン・ペドロが娘を託すことのできる相手は英国しかなかったようにも思えますしね~。何よりお似合いの夫婦です。もちろんイサベル&ヨーク公も。
青池先生にはヨーク公夫妻の英国生活記も描いていただきたいですが、資料少なそうですよね(涙

くみぞうさま
この件、私も以前に調べた事があるのですけど、
カギを握っていると思われる人々が無名なせいなのか、
いくら検索してもヒットせず、結局怪しいままで終わっています。
あるいは、それを意図した家系図なのかとさえ思えます。
(母:サンチャ・デ・ロハス)は何故()ですか?…も、もしかして
これは、次回へつづく...暗示なのですか?
この墓碑(紋章)を目にした時、ただコラージュされただけのような、
ちぐはぐで不自然な印象を受けました。
通常の紋章はもっとデザイン性豊かで威厳を感じるものですが、
やはり、そういう事でしたか。

金花糖さま
ご無沙汰してしまってすみません!
>(母:サンチャ・デ・ロハス)は何故()ですか?…も、もしかしてこれは、次回へつづく...暗示なのですか?
すみません。父方について書こうと思ったので、サンチャ・デ・ロハスは参考程度に名前を載せておいただけなのでした。特に深い意味はありません(汗
紋章についての知識はほとんどないのですが、この頃の紋章ってみんなこんなものなんじゃないかな~と単純に思ってました。っていうか、識者の解釈を目にするまではなんの疑問も持たず、純粋に感動してました!

ご無沙汰しております。
回想録コピーでよろしければ、お送りいたしますが・・・

みゆきさま
>回想録コピーでよろしければ、お送りいたしますが・・・
なんというありがたいお言葉!
でも…
英語…ですよね(笑
なんだかんだで今は何も手につかない状況にあるので、そのうち時間ができたら異国の本たちの世話を見てやらねばと思っております。
もしよろしければお暇なときに…ごにょごにょ
La petrista del siglo XXI

くみぞう

Author:くみぞう

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