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アルカサル完結編<前編>

1369年1月下旬、トレド救援のためドン・ペドロがカルモナを出発するシーンで「アルカサル」は再開した。
長期の中断を感じさせない青池先生の筆遣いとストーリー展開に再開を待ちわびた日々さえ嘘のよう。
ロペスの掲げる獅子と城の旗が風にはためく音、王の衣装の厚さや重みまでが感じられるよう。
ドン・ペドロの死まであと2ヶ月―

全100ページのうち90ページ近くがロペスの回想に費やされる。
エンリケの帰還、傭兵部隊の乱入による王国内の混乱、そしてアルフォンソ、マリア、イネストロサの死。
死に際のマリアの声にならない言葉…。
帰城したドン・ペドロに、いつものように「ドン・ペドロ様…」と呼びかけたのだろうか。最期の時を王に見守られ、安らかに天に召されたのだと思いたい。おそらくアルフォンソの死も知らされてはいなかっただろう。
忠臣イネストロサの死はあまりにあっけなく、これが中断前のペースで描かれていたらどんな名シーンになっただろうと残念でもあり、王の怒りや絶望、そして私自身の悲しみを思うとサラッと描かれてるくらいでよかったのかもしれないとも思う。本当ならディエゴの壮絶な死による名誉はイネストロサのものだったのに…ディエゴめ。
そしてアルバレスの死。王の信任厚いアルバレスが、たとえ苦渋の決断であったにせよ王を裏切る姿は見たくなかった。寵臣としてその恩恵にあずかってきた身でありながら王を裏切り、ぬくぬくと生き延びたアルバレスは「アルカサル」の中では命を失うことになった。王の寵臣のまま死んだことは、アルバレスに対する青池先生の温情だろうか。

いよいよ描かれるドン・ペドロ自身の死。
3月20日、モンティエルから逃れてきた騎士がドン・ペドロの危機を伝える。急ぎ王の救援に向かうロペスの前にボロボロになったマテオスが現れ、王の死を告げる。

……王は…

2日前だ…
エンリケとデュ・ゲクランに謀殺された………!


救援を求める騎士が到着してからまさか5日も経っていたなんて…
いきなり現実に引き戻されて頭をハンマーで殴られたかのような衝撃を受けた。ショックだった。
そうだ。史実ではロペスは山越えの途中で王の死を知り、カルモナへと馬首をめぐらすのだった。

ロペスは王の死を知らず、もはや手遅れであるとも思わずにモンティエルへと向かっていた。私は、王が死ぬことを知っていた。でもこの瞬間、すでに王が死んでいるなんて、運命の23日から2日も過ぎていたなんて頭になかった。王の死に衝撃を受けつつ、部隊を鼓舞し指揮するロペスとともに私は泣いた。

私は、高校2年生の時に父を亡くした。
その日、父は朝から友人に会いに行き、母と兄と私は珍しく3人で居間のベランダのあたりに集まり、外出した父が持ち帰るであろうおみやげを推測していた。ふと外を見ると200メートル先の角を我が家の方へと救急車が曲がってくるのが見えた。サイレンも鳴らさず静かにゆっくりと進んでくる。救急車は家の前を通り過ぎた。いったいどこへ行くんだろうと不安に思っていると、ゆっくりと止まり、玄関の方へとバックで入ってきた。
事情が飲み込めないまま玄関を飛び出すと、救急車の後部ドアが開けられ、そこには父が眠っていた。私たちが父の話をして笑っていたとき、父はもう亡くなっていた。それを知らずに、私たちは…
父にすがって取り乱す母と、同乗していた父の友人から事情を聞いていた兄。私はといえば、心の中では「お父さん、お父さん」と呼びかけることしかできず、この体が自分のものではないような、体から魂だけが抜け出してまるで実体のないフワフワしたモノになったような気がしているのに、伯父宅に電話をかけ、誰かが勝手に私の口を動かしてるみたいに、父の死を知らせていた。
ふと、そんなことを思い出した。

おっと、ローデ語り失礼。
ガリシアへの道中、ベアトリスとドン・ペドロが2人で話すシーンがあり、前にもこんなシーンがあったなぁと思い出した。

あんたたちは先に行ってて あたしおとーさまにお話があるの

私を非難するときのマリアそっくりだ

おとーさまは大きな国の王様だから
特別な人だから どんな事をしてもよくて
だから恋人がたくさんいても当たり前なんだって
あたし知ってるのよ もう7歳だもの
でもねでもね 
おとーさまが一番愛しているのはおかーさまなのよねっ
そうでなきゃあたし許さないわよっ

お前はどう思うか ベアトリス いつも父上と母上を見ていて何を感じる?

おとーさまはおかーさまのことすごーく好きみたい


あのときドン・ペドロの膝に乗っていた母親思いのおませなベアトリス。マリアもドン・ペドロのことをとても愛していて、そしてどんな苦境にあってもただ王の愛だけを信じて待っていたことを、ベアトリスはずっとそばで見て知っていた。

いつもお父様を待っているわ
お母様みたいに



ベアトリスだけでなくコンスタンシアもイサベルも母マリアを理想の女性と思って育ったに違いない。コンスタンシアが父親似のしっかり者になったのは、母の面影をもつ姉ベアトリスを守ろうという気持ちの表れか。後にトラスタマラ家を悩ませることになるジョン・オブ・ゴーントの行動も、実は父王の権威を取り戻すためのコンスタンシアの策略かも…
カタリナ・デ・ランカスターは、母や叔母から、賢く慈悲深いマリア・デ・パデリヤと、勇猛で厳正なカスティリア王ドン・ペドロの話を繰り返し聞かされて育っただろう。
前編では描かれなかったドン・ペドロの最期。ロペスやベアトリスの行く末を思うと後編を待つ心は重い。その中で、マリアの優しさとドン・ペドロの厳しさをもってカスティリアに嫁ぐカタリナ・デ・ランカスターの登場はだけが希望の灯火。

そしてそしてこの人の登場はとても嬉しかった!アラベラ姐さん…!
かつてロドリゲスとのお見合いに心細い思いで縮こまっていたアラベラ。彼女に優しく声をかけたのはマリアだった。そして、傷心の王女たちを温かく力強く迎えたのは、ロペス家を支え続け、ロドリゲスのもとに嫁いだアラベラの手。
…ふとMlle Cさま宅のアラベラを思い出してしまった。

「十数年ぶりのドン・ペドロにやっと描きなれたと思ったら死んでしまった。悲しい…」(青池保子の月イチ報告@エレガンス・イブ4月号)と書かれていたのを見て、あらためて切なくなってしまった私。
完結後に亡くなった人達のお話を描くのは辛いかもだが、ぜひとも番外編を描いていただいて未収録+番外編で1冊、完結編で1冊、コミックスにしてほしいものだ。


以上、思いつくままに書きなぐってみたけれど、いまだに辛くてなかなか読み返せなかったりする。
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私も番外編もしくはコミックス収録にあたって青池先生が加筆してくださることを祈ります。
アルカサル1巻目は大幅に加筆されてましたし、2巻目も多少の加筆があったと思います。最終章となる13巻目ですもの、イネストロサさまの戦死の場面…辛いですがもう少しページを割いて下さるのを望みます。ディエゴやフェルナンドでさえあれだけ描いてあったのですもの。
アラベラさま私も大ファンです♪後編では活躍されるような気がします。
「私は王国が、外国の王の支配で分裂することを望んでいない」
「王たる者には父祖から継いだこのカスティリア王国が、完全に一つに保たれることが大切なのだ」と仰ったドン・ペドロ王。
それに比べて王冠を奪うためにどこまでもフランス王に従順だったエンリケ。
やはり器が違うというか、真の王と汚い簒奪者の違いなんですよね。あんなヤローが何百年も善人づらしてきたなんて――――許せんエンリケ――――!」
はっ…ここで毒を出してはいけないわ。デトックスのために自分の領地に戻ります。

おお!
私も今日やっと感想upした所です。
奇しくもくみぞうさんとほぼ同時に感想を書いていたとは。
RINOさんのおっしゃる
>「私は王国が、外国の王の支配で分裂することを望んでいない」
「王たる者には父祖から継いだこのカスティリア王国が、完全に一つに保たれることが大切なのだ」と仰ったドン・ペドロ王。
この場面、もっと詳しくじっくり見たかったです~~~。
単行本化の暁には加筆されることを激しく希望。
ポルトガル王の領地に金貨を投げる場面もひとつよろしく。
って、秋田書店に直訴しなければ!

RINOさまへ
気にせずこちらで毒吐きしてくださいな♪
これまでの比較的小規模な反乱と違い、大国を引き入れての戦になった今回は、エンリケの小物ッぷりが目に付きました。
早くドン・ペドロから逃げなければ!とか、恥ずかしげもなくデュ・ゲクランと茶番劇を演じる姿には哀れみすら覚えました(笑
イネストロサ戦死のシーン、きっと連載が中断せずに続いていたら、もっと違った形に描かれていたのでしょうね。つくづく残念です。

Mlle Cさまへ
私もお二方同様、ここはもっとじっくり読みたかった(涙
>「私は王国が、外国の王の支配で分裂することを望んでいない」
「王たる者には父祖から継いだこのカスティリア王国が、完全に一つに保たれることが大切なのだ」と仰ったドン・ペドロ王。
王の言葉に感銘を受ける人が1人もいないのが残念でなりませんでした。本当に、ドン・ペドロを理解する人たちがいなくなっちゃったんだなー…と(涙
今回涙涙で読み続けた私ですが、思わず笑ってしまったシーンがひとつ。
エンリケの敗北を知った妻ホアナがサラゴサに逃れるところ。あまり感情を出さなかった彼女が泣いている…と、コマの右隅に目を移すと涙だだもれの…これは…息子のホアン…?
この威厳のなさはいったい…(笑

わ~~ん、くみぞうさん、こんばんは。
本がなかなか手に入らず、今日、やっとやっと読みました。
哀しすぎて、ショッキング過ぎて、言葉も見つかりません。
心に大きな穴があいてしまいました。今、何も手がつかない状態です。
青池先生のお気持ちを考えると、どんなにお辛かっただろうかと思います。感謝の念でいっぱいです。
王様の最期はどんなに辛くてもしっかり見届けようと思っていたので、ページを1ページずつめくっていくのがもったいなかったです。まだまだ終わらないで欲しいという気持ち。
エンリケは、事ここに至っては、ただの簒奪者に成り下がってしまって、「ふん、何てさみしい奴なんだ」と冷ややかに眺めてしまいました。デュ・ゲグランも憎らしい・・いまいましい奴め!(恕)
王様の死があのように描かれるとか思ってもみなかったので、後編では、それに触れられるのか、もう触れられないのか、もやもやした気持ちで心安らかには到底なれません。(号泣)
あぁ、それにしても、くみぞうさん。
このお部屋があって良かったです。(大感謝)
一人では、この内容に耐えられませんーー。

わ~~ん、ワルツさま、こんばんは!
入手困難だったのですね。言って下されば早馬でお届けしましたのに…!
描き手にも読み手にもつらい別れになりましたね。私もワルツ様と同じく、ページをめくるのがもったいない、まだまだ終わらないで欲しい気持ちでいっぱいでした。でも、あと一話で終わってしまうのですね。くすんくすん。
中断前のペースだとそうでもなかったかもですが、今回のようにダイジェスト的に話を読むとエンリケの欠点、弱点がズバズバ書き出されていて、ちょっと気持ちよかったです(笑
デュ・ゲクランとの猿芝居、見ていて本当に気分が悪かったです。モンティエルのシーンがどのように描かれるのか…
あの調子で「私は王様を作ったり壊したりはしないけど、私の主人をお助けしよう」とかいうんでしょうか。ム・ムカツクー!!!!!
このブログを始めた頃は、皆さまと最終回を語り合う日が来るとは思っていませんでした。
こうして皆さまとともに王様の最期を見守ることができるなんて、本当に心強く、幸せだなぁとしみじみ感じています…。
La petrista del siglo XXI

くみぞう

Author:くみぞう

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